近年クシタニの製品ではテキスタイルウェアが人気を集めていますが、そもそもクシタニは革ツナギを作ってきた会社。その真の実力は革製品に顕れているといってもいいでしょう。
皆さんのレザージャケットに対するイメージはなんでしょうか?硬派、スポーティー、安全、渋い、固い、重い、価格が高い、などなど……
近年バイクウェアにはバイクを降りた後も着たまま街中を歩けるようなカジュアル性が求められるようになってきました。このような風潮の中で、どうしても固いイメージが付いてしまうレザージャケットはコーディネートが難しく、合わせるのに苦労するため、敬遠されることが多々あります。
またテキスタイルジャケットが急速に高機能化していることもあって、夏は暑く冬は寒い、決して使い勝手がいいとは言えないにも関わらず高価格な事も敬遠に拍車をかけています。
しかしレザーにはレザーにしか出すことのできない独特の風合い、質感があり、使えば使うほど馴染み、使い勝手がよくなっていくのは、使えば使うほど損耗するだけのテキスタイルウェアと比べて非常に素晴らしい点でしょう。
そして最近はレザージャケットにもカジュアルの波が押し寄せており、様々なバイクウェアメーカーから、カジュアル寄りのレザージャケットが販売されています。
そして今回は、バイクのレザージャケットといえば!と言われるほどの、革ツナギの老舗クシタニが新しく発売した新たなスタイルのレザージャケット、レギュレータージャケットについて紹介していきます。
REGULATOR JACKET(レギュレータージャケット)
<2.カラーリング>
REGULATOR JACKET(レギュレータージャケット)基本情報
■素材:〈表〉ソフトステア牛革〈裏〉ポリエステル100%(メッシュ)
■仕様:〈肩、肘、背中〉ソフトパッド標準装備(脱着式)
■カラー:①ブラック②チャコールグレー
■サイズ:M、M/2W、L、LL、L/3W、LL/3W、XL
■価格:M、M/2W、L、LLサイズの場合 64,000円(+税)
■価格:L/3W、LL/3W、XLサイズの場合 74,000円(+税)
=====メーカー説明=====
ソフトな革を採用したアウトドアテイストなフード付レザージャケット。脇のファスナーの上部を開けるとエアーインテークに、下部はポケット。
クシタニのレザージャケットなのにカジュアルなフード付きモデル
●まるでパーカー。クシタニのレザージャケットの中で異色?なフード付きモデル
このレギュレータージャケットはクシタニのレザージャケットのラインナップの中でもっともカジュアル寄りなレザージャケットとなっています。
フード付きで、シルエットもすっきりしており、遠くから見るとパーカーと見間違うのではないかと思われるほどです。
フード付きのレザージャケットというのは、アパレル業界においても近年増えているスタイルです。レザーの硬派な印象にフードを追加することで、レザーのハードなイメージが少し融和されて、やんわりとカジュアルさが漂う何とも言えない良さが生まれます。
この独特な感じはレザー+フードのみが醸し出すことのできる雰囲気でしょう。
●着用時のスタイル重視
下の画像を比較して見てください。
左がレギュレータジャケット、右がマーベリックジャケットです。どちらも価格は同じです。
どうでしょう。同じレザージャケットでもシルエットが明らかに異なっています。
レギュレータージャケットは肩の角が立っており、胸から胴にかけて一定の幅ですとんと落ちていて、くせのないきれいな、すっきりとしたシルエットになるようデザインされているのが分かりますね。
一方のマーベリックジャケットは肩幅はあまり変わりませんが、肩に角が無く丸まっています。(肩部の半径が大きい)そのため肩が少しゴツく見えます。また、胸部に対して胴部が締まっているため、逆三角形の形となっており、全体的にマッシブなシルエットになっています。
バイクを降りた後、街に溶け込むなら断然レギュレータージャケットのシルエットですね。
●レギュレータージャケットはシルエット重視 マーベリックジャケットは機能性重視
ではなぜここまでシルエットに差が生じているのかというと、それはコンセプトが異なるからです。どちらも同じライディング用のバイクジャケットですが、レギュレータージャケットはシルエット重視のカジュアル性、マーベリックジャケットはライディング時の快適性重視の機能性を重点にデザインされています。
マーベリックジャケットはライディング時に着ていて最も楽になるように、ライディング時の姿勢にぴったりフィットするよう立体裁断されています。さらにタイト目で体にフィットするようなサイズ感なので風によるバタつきもなく、プロテクターもCEプロテクターで防御性も高く、ロングツーリングのような一日中バイクに乗っているようなときに優れた能力を発揮するジャケットでしょう。
レギュレータージャケットは機能性だけでみると、着用時の見た目を重視している分、マーベリックジャケットなどのジャケットに劣ります。バタつきも皆無ではありませんし、付属のプロテクターもソフトパッドです。
但しレギュレータージャケットにも、ライディングを快適にするための最低限の機能は付いています。
レギュレータージャケットに付いている様々な機能
1.肩から脇、胴にかけてストレッチニットパーツを使用して運動性を確保
2.胸から胴まで伸びるファスナーは開くと、上半分がエアインテーク、下半分がポケットになる面白い構造
3.背中には暖まった空気を排出するエアダクトを装備。ベルクロでとめてバタつきを防止可能
4.フード部にもベルクロがあり、バタつきを防止可能
5.ずり上がりを防止するためのタブ
6.パンツとジョイント可能なセットアップに対応
ざっとこれだけの機能が付いています。一つ一つは細かい機能なのですが、それぞれがよくよく考えられた機能で、それぞれが確実に着用時の快適性を上げてくれます。こういった細かい配慮はクシタニならではですね。
レギュレータージャケットのレザー(本革)について
●レザー(本革)とライディングジャケットの相性は抜群
ライディング用ジャケットの素材として、レザーは優れた素材の一つです。
防風性能や引き裂き強度に優れており、走行中や転倒時において優れた効果を発揮します。特に転倒時に路面を滑っていくような場合には、一般的なテキスタイル(織物)のジャケットと比較して高い防御力を発揮します。テキスタイルでは、路面との摩擦に耐え切れず破けて体への裂傷が発生してしまうような場合でも、レザーなら耐えて外傷を最小限に抑えることができるという場合が多々あります。
なのでレザージャケットはライディング時には優先して身に着けたいジャケットでもあります。
その反面、どうしても硬派な、レーシーな印象が付きまとってしまい、ファッションとしてのコーディネートも難しいです。ましてやライディング用のレザージャケットは肩回りや背中にプロテクターが装備されているため、逆三角形のようなスタイルになりやすく、街中では異様に映ります。そのため、バイクを降りた後、ジャケットを着たまま街中や店内に入って行きづらいといったネガティブな一面もあります。
しかしこのレギュレータージャケットはライディング用レザージャケットでありながら、フード付きでカジュアル感があり、シルエットもすっきりしているため、レザージャケットを着たいけど、硬派すぎる見た目やごつごつした見た目が嫌な方にはとっておきの一着となっています。
●レギュレータージャケットに使用されている革はステア牛革。耐久性にすぐれる
このレギュレータージャケットの革にはステア牛革という革が使用されています。
ステア牛革とは
生後2年を経過した雄牛の革です。生後3ヶ月~6ヶ月の間に去勢されており、去勢されていない雄牛の革(ブルハイド)と比較して革質がやわらかくなっています。厚みが均等であり、様々な用途に使用可能です。
カウハイドと比べてやや厚みがあります。カウハイドと同様に多くの革製品に利用されている皮革です。
ステアハイドは牛革の中でももっとも一般的な革であり、素材に「牛革」とのみ記載されている場合、ほとんどはこのステアハイドです。肉牛として育成された牛を食用とする際の副産物です。柔らかさと強さを持ち、非常に様々な用途で利用されています。
参考文献:革製品の購入と取扱ガイド
●クシタニのレザージャケットは軽くて柔らかく、それでいてしなやか
60年以上革ツナギのレーシングスーツを作っているだけあって、クシタニのレザージャケットは他社のそれらとは一線を画しています。
同価格帯の他社の革製品と比較しても非常に柔らかく、しなやかで、購入して初めて着た瞬間から、まるで何年も使い込んできたかのような着心地を感じることができます。またレザージャケットなのに軽く着ていて疲れにくいです。
そのため価格は最低でも6万円後半~となっており、かなり高額ですが、使用している本革も良く、鞣しもしっかりしているため、しっかりと手入れをすれば10年は余裕で持ちます。(但しレザージャケットの中には、レザー以外の生地にポリウレタンを使用しているジャケットがあるのでそれらは注意が必要です)
REGULATOR JACKET(レギュレータージャケット)の問題点
●生産数が少なすぎる……
レザーのハードさとカジュアルのソフトさが高い次元で融合しており、僕も非常にお気に入りの一着なのですが、問題点を挙げるとすると、その生産数の少なさですね。このジャケットは海外生産なので基本ロット生産で、1年間の生産数があらかじめ決まっているので売切れたらその年はそれで終わりです。
問題なのがその生産数で、このレギュレータージャケットは生産数がかなり少なく、2018年は店舗に並んだ瞬間に即売切れてしまいました。僕もキャンセル待ちで何とか購入できた次第で非常に運がよかったです。
せっかくすぐれたレザージャケットなのである程度日数が経過しても購入することができるような体制をとってもらいたいというのが率直な想いですね。
●雨に弱く、夏は暑く、冬は寒い
この製品に限った話ではなく革製品全般の話なのですが、雨に弱く、防寒性に乏しい、パンチングもなく、通気性があまりないので、真夏には暑すぎて使えません。高額の割には、一年の中で気持ちよく使える期間が長くないというのがネックですね。
このジャケットは一応通年モデルですが、気温的に最も使いやすいシーズは春と秋ですね。ただし、秋は梅雨とならんで一年のうちで最も降水量が多い季節なので、着ていく際は天気の見極めには注意が必要です。
●クシタニのレザージャケットの上位モデルは特殊な革を使用している
クシタニのラインナップの上級モデルのレザージャケットは「プロトコアレザー」という素材を使用しています。
こちらはレザーの特性はそのままに、レザーの雨に弱く、通気性に乏しいという2大弱点を克服しており、レザーの定義をひっくり返すような素晴らしい素材なのですが、その分価格は当然上がっており、最低でも10万円を超えてきます。
プロトコアレザー
従来の皮革にフッ素加工を施すことにより、エポックメーキングな撥水性能を実現した『プロトコアレザー』。しかも伸縮性に富み、フィット感、快適性をも高い次元で達成した先進の高機能天然マテリアルとなっています。
エグザリートレザー
KWPレザーがさらに進化した『エグザリートレザー』。撥水性に優れているだけでなく、ご自宅でのクリーニングが可能なウォッシャブルレザーです。
これらの素材はレギュレータージャケットにも採用して欲しかったのですが、結局は価格とのトレードオフで、仮にレギュレータージャケットにこれらの素材が使用された場合は、恐らく価格は10万円を超えるでしょう。
そうなるとカジュアル寄りで門戸を広く開けた、言うなればレザージャケットのエントリーモデルであるようなレギュレータージャケットに手を出しにくくなってしまうという難点があります。そういう点を踏まえて、価格はなるべく抑えた設定にしたのでしょう。
せっかくバイクを降りた後どこへ行くにも気楽なスタイルなのに、雨の心配が付きまとうというのは残念です。クシタニにはそれを何とかできる素材があるのでなおさら残念に思うのですよね。
REGULATOR JACKET(レギュレータージャケット)まとめ
●イチオシポイント!
・レザーの硬派なイメージとカジュアルさが見事に同居している
・革はやわらかくしなやかで初めて着た瞬間から馴染む
●残念なポイント
・価格が高い。64,000円(74,000)(+税) 消費税8%で69,120円(79,920)です。(それでもクシタニのレザージャケットの中では最も安価な部類だが……)
今回はクシタニのレザージャケット、REGULATOR JACKETを紹介しました。
レザーの優れた機能はそのままに、カジュアル寄りにテイストされ、より気楽に着ることのできるようになったレギュレータージャケットには、今までレザージャケットを敬遠してきた層の方々にも、おっと思わせる魅力があります。
僕もレザージャケットは今まで敬遠してきたのですが、このジャケットは購入してしまいました。そして買ってよかったと思っています。
生産数が少ないため、店頭に並ぶと同時に完売必至ですので、どうしても欲しい方は事前に最寄りのクシタニのショップに連絡して、発売時期を確認して予約するのがベストでしょう。クシタニでは予約品の試着後のキャンセルも可能なので気楽に予約することができます。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
画像出典元:KUSHITANI 公式HP